Takako です。華がある男、と言えばやっぱり 市川海老蔵は外せない。
今回の『六本木歌舞伎「座頭市、新解釈」』も一応歌舞伎なのだが、幕が開くと素顔に
白いTシャツと軽めのズボンといういでたちで登場し、客席に歓喜に満ちたどよめきを呼んでいた。

このTシャツはオープニング用で、後は赤い衣装を身につけていたがやはりずっと素顔だった。杖を握ってすらりと立つその姿には微塵のゆらぎもない。青年の身体の美しさと力強さを表現して余すところがない。本当に、絵になる役者である。

フェスティバルホールは収容人数2700人らしいがこの日の客入りは2500人との事で、人、人、人。さらに役者さんたちへのお花も何とも豪華なものばかりで、舞台の華やかさとぴったりマッチしていた。

幕間には役者さんたちがホワイエ、エスカレーター、また客席に現れたりボックス席に座ってたりして笑いをとり、海老蔵の客いじりも丁寧で爆笑を呼び、カーテンコールは何と七回と、客席ほとんどスタンディングオベーションで湧きに湧いたエンターテインメントぶり。歌舞伎界では人気を挽回しようと、以前から随分観客に近づいた演出をしてるな、と感じることはあったがちょっとキレがなかった中、今回は、脚本、演出、そしてもちろん役者の突き抜け感ハンパ無し、で非常に洗練されたつくりで満足して帰ってきた。

これはこれでいい、とは感じる。ただ、何というのか作品自体、この効率優先で器用な生き方や浅く広い人間関係が好まれる現代にピタリとハマりすぎていること(言い換えれば、こうすれば観客受けするという計算のもと、カチっと時間内におさめましたよ的な)と、海老蔵があまりにも洒脱と言うか垢抜けしており、かつての勝新太郎が放っていた、座頭市のもつ一種異様とも言うべき気迫みたいなものや、泥臭さがなかったことが少し物足りなくはあった。

そもそもわたしが何で勝新版『座頭市』に魅かれたかと言うとね。五感とある種超感覚が剣の技と身のこなしに完全に統合されているのにシビれたからだ。映画とはいえ超人!とワクワクしたあの日。

しかしこの『現代歌舞伎 created by 映画シナリオ』では真剣勝負!というような、殺気で空気がピーンと張るような立廻りはない。それをこれに求めるのは無理だとは分かってますが。その中で一人、妖気を放つ演技でみんなの度肝を抜いていた、市川右近あらため市川右團次さんは流石の迫力、存在感で、舞台を引き締めてくれていた。全体に、エンターテインメントとして素晴らしい出来でした。一緒に行った母も「今ふう過ぎてちょっと付いて行かれへんとこあった」と言いつつも、機嫌良くしていて良かった。ともあれ、お盆の一夜、楽しく過ごさせて頂きました。

 

番外編:フェスティバルホールについて
フェスティバルホールが新しくなってから、訪れるのはこれで3回目です。昔からのトレードマークとも言える、赤いカーペット敷きの美しい階段はそのままに、吹き抜けが斬新な素晴らしいホールに生まれ変わりました。今回は歌舞伎ということで幕間(休憩時間)が30分ありましたが、その間、簡単なスナックとドリンクがビュッフェ形式で提供されているコーナーがあり、欧米風です。そこでは定番のワインやビール、コーヒーのほか、黒酢サングリアや黒酢ジュースなどオリジナルのものもあって楽しげでした。また、2017年4月には中之島フェスティバルタワー・ウエストも開業し、ダイニング施設も充実、そしてコンラッド大阪も入り、と、とてもお洒落なエリアになっています。機会があれば、ぜひお出かけを。
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